ロボットケーブルにおけるクーラント試験とは?
摩擦による熱が発生する機械には、熱を冷却する役割を持つ「クーラント」は欠かせないものです。
ただしクーラント使用下ではロボットケーブルに劣化を起こす可能性があるため、耐クーラント性を備えたロボットケーブルを選ぶ必要があります。
クーラント(水溶性切削油剤)とは
クーラント(水溶性切削油、水溶性切削油剤)は、機械の摩擦によって発生する熱を冷却するために使われる液体です。
切削油には不水溶性と水溶性があり、水溶性であるクーラントは原液を水で希釈して使用します。
またクーラントは水溶性であるために熱伝導率が良く、冷却性に優れています。
水溶性であることからオイルミストの発生や発煙・引火の危険性がなく、機械の無人化にも適している切削油剤です。
(※一部引火の可能性があり、貯蔵時に消防法の適用を受ける製品もあります)
ロボットケーブルの耐クーラント性とは
クーラントは冷却性に優れる反面、希釈に水を使用するため、クーラントに晒される製品にバクテリアやカビ、サビなどによる腐敗劣化を引き起こすこともあります。
ロボットケーブルの場合は、クーラントがケーブルに浸透すると絶縁抵抗が低下する可能性があるのです。
そのためロボットケーブルには、クーラントが飛散する機械への配線に耐えられるように、「耐クーラント性」を高めた製品(もしくは絶縁低下対応の製品)があります。
ロボットケーブルにおけるクーラント試験の方法
耐クーラント性のロボットケーブルを製造する企業では、クーラント試験の結果を公表しているところがあります。
例えば、太陽ケーブルテックで行われるクーラント試験は下記のようなものです。
<試験概要>
・試験試料である耐クーラント性のあるロボットケーブル2種、耐クーラント性のない1種の計3種類のロボットケーブル3メートル分を用意
・3種類のロボットケーブルを試験油となるクーラントにおよそ1,000時間浸す
・時間経過とともに変化する絶縁抵抗値を測定器にて計測する。
・この際クーラントの温度は70℃に設定
<試験結果>
・耐クーラント性のないロボットケーブルに対し、耐クーラント性のあるロボットケーブルは、絶縁抵抗値の低下はあまり見られない
・試験実施後、ケーブルの形状変化はない
<試験概要>
・ロボットケーブルサンプルを試験油となるクーラントに一定時間に浸す
・時間経過とともに変化する下記特性値を計測する
?絶縁抵抗値
(2)シースの引張強度残率及び伸び残率
(3)シースの硬度変化
(4)シースの形状変化(長さ変化)
(5)シース外観に膨潤現象の有無
試験の際クーラントの温度は一定温度に設定する。
<試験結果>
耐クーラント性の強いロボットケーブルは、絶縁抵抗値の低下はほぼ見られず、機械特性や外観においても著しく変化が見られない。
おわりに
ひとくちに「耐クーラント性」といっても性能はさまざまですが、ロボットケーブルの製造会社が公表しているクーラント試験の結果は、耐クーラント性の性能を把握するための指標になります。
クーラントを使用する環境でのロボットケーブルを探している場合は、仕様書に耐クーラント性と記載があることとクーラント試験結果を確認しましょう。