ロボットケーブルと汎用ケーブルの違い
ケーブルには、電力用、制御・計測用、通信用など、用途によってさまざまな種類があります。自動化や工場ロボットなどで使用される、しなやかで耐久性に優れ、また耐油・耐熱性に優れたケーブルは汎用ケーブルと区別され、ロボットケーブルと言われています。
今回は、ロボットケーブルと汎用ケーブルの違いについてご紹介します。
ロボットケーブルとは
ロボットケーブルとは、ロボットアーム配線やケーブルべア配線などに用いられるケーブルです。高い柔軟性と耐久性を持ち、繰り返しの移動などにも耐えられるように設計されています。そのため、ロボットケーブルは、生産工場の機械で使用されることが多いケーブルといえます。
ロボットケーブルと汎用ケーブルの違い
ロボットケーブルと汎用ケーブルには、どのような違いがあるのでしょうか。ロボットケーブルと汎用ケーブルの最大の違いは、耐屈曲性と耐捻回性にあります。
ロボットケーブルはよくロボットアームの配線に利用されますが、これはロボットケーブルが耐屈曲性と耐捻回性を有しているためです。ロボットケーブルは、導体撚りピッチや絶縁体撚りピッチを細かくしたり、柔軟性に優れた素材を材料に採用したりするなど、屈曲動作や捻回動作でケーブルにかかる力を逃すよう工夫されています。
一方、汎用ケーブルは、固定した状態での利用を想定しているため、例えばロボットアームに汎用ケーブルを使った場合、屈曲や捻回時にケーブルが断線するおそれがあります。したがって、屈曲や捻回が必要とされる場面には汎用ケーブルは向きません。
ロボットケーブルの中には、産業用ロボットや工作機械などの利用環境に合わせて、耐屈曲性だけでなく、耐熱性・耐油性・耐薬品性を備えた製品もあります。また、ロボットケーブルは汎用ケーブルよりも高い性能が求められるため、メーカーは厳しい試験を実施しています。
ロボットケーブルの断線事例
ロボットケーブルは、「繰り返し運動」「屈曲」「油や薬品の中」など厳しい環境下で用いられるため、断線の可能性もあります。
例えば下記のような原因から断線が起こり得ます。
・ケーブルの捻じれ(コークスクリュー現象)
「コークスクリュー」とは保護管の中に設置されている複数のケーブルが、曲げ動作等によって過度に引っ張られ、捻じれたように変形して元に戻らない現象です。
コークスクリューが起こった後には、線心の破断が発生することがあります。
・絶縁体の損傷
屈曲動作による材質の疲労や内部での摩耗で絶縁体が損傷し、短絡が起きることもあります。
・外皮(シース)の膨張や破断
外皮の材質が使用用途に合っていない場合や、想定されていない温度下でケーブルが使用された場合などは、外皮の膨張や破断が起きる可能性が否めません。
外皮の膨張や破断は外部から見て確認できるので、膨張や破断があれば早急にケーブルを交換すべき状態です。
ロボットケーブルの選び方
一度ロボットケーブルの断線が起これば製品の修理や検査、製造ラインの稼働停止など、各方面にロスが発生します。
断線を少なくするためには、用途に合わせて以下の条件などを考え、適切な製品を選ぶことが必要です。
・繰り返し運動や移動が多い場所に敷設する場合、長期安定して使用可能か
・屈曲に優れているか
・捻じれにくい構造か
・耐油・耐薬品性能が高いか
適切な製品を長時間使うことができれば、結果的にコスト削減にもつながります。
また同じメーカーのケーブルを継続的に利用できれば、オーバースペック/スペック不足などの判断・比較もしやすくなります。
ケーブルの定期交換とストックを視野に入れておく
ケーブルを選定する段階で断線を完全になくすのは現実的に難しいことです。
なので、断線の予防と断線が起きた後の対処のために、ロボットケーブルを選定した後にもできる対策をしましょう。
・定期交換を行う
ロボットを長期間、問題なく稼働させるには、消耗品であるロボットケーブルの交換も考えたいところです。
ロボットの定期的な保守の際には、ロボットケーブルの点検・定期交換を合わせて行うのが望ましいでしょう。
・ケーブルのストックを行う、技術情報をチェックする
断線を起こしてしまった場合の早期復旧のためには、ケーブルをストックしておくこと一つの手です。
ケーブルの継続的な利用と予算を踏まえ、ケーブル選定・使用中の段階でストックを検討してみてください。
また断線が起きた後に速やかに対処するために、メーカーからの新製品情報や技術情報は定期的にチェックしておきましょう。
おわりに
今回は、ロボットケーブルと汎用ケーブルの違いについてご紹介しました。
ロボットケーブルは「過酷な環境での使用を想定したケーブル」であるのに対して、汎用ケーブルは「動かさずに使用することを想定したケーブル」といえます。
ケーブルにはそれぞれ特徴があるため、ケーブルを選ぶ際は利用目的や利用環境をよく確認することが大切です。
ケーブルを固定せずに利用する場合は、耐屈曲性や耐捻回性に富むロボットケーブルを選ぶことをおすすめします。