ケーブルの絶縁体の色分けはなぜ?
ケーブル内の導体は絶縁体によって被覆され、赤・青・緑・黄などのように色分けされていますが、その理由についてご存じでしょうか。
今回は、ケーブルに絶縁体が使用される目的や、ケーブルの絶縁体が色分けされている理由についてご紹介します。
ケーブルで絶縁体が使用される目的
ケーブルは、絶縁体で覆った導体をより合わせ、ノイズ対策のためのシールドを施し、さらに導体を保護するためのシース(外皮)で覆われています。
それぞれの導体を絶縁体で覆う目的は、導体同士が直接接触してしまうことを防ぐためです。導体同士が直接接触していると、電流を流したときに大きな電流が流れてしまい危険なため、電流の流れを遮断する絶縁体で導体を覆い、安全に電流が流れるようにしています。
絶縁体の材料
絶縁体の材料には下記のようなものが使われています。
・ポリ塩化ビニル(PVC)
耐電圧や絶縁抵抗が高く、難燃性、耐油性、耐薬品性などにも優れた材料です。
・架橋塩化ビニル(IR-PVC)
ポリ塩化ビニルを、架橋という網状の分子構造に変化させたものです。
ポリ塩化ビニルは熱に弱い性質を持つのですが、架橋にすることで耐熱性を高めています。
・ポリエチレン(PE)
絶縁抵抗、絶縁耐力にも優れ安定している材料です。
耐薬品性、耐溶剤性、耐水性もあり、絶縁体だけでなく外皮(シース)の材料としても用いられています。
耐熱性に乏しく、直射日光や紫外線に弱いなどの欠点があります。
・架橋ポリエチレン(XLPE)
ポリエチレンを架橋状にしたものです。
架橋塩化ビニルと同様に、耐熱性が強化されています。
・発泡ポリエチレン(PEF)
ポリエチレンに発泡剤を加えスポンジ状にしたものです。
静電容量を下げることができ、軽量化も図れますが、強度が若干弱くなる傾向にあります。発泡ポリエチレンに架橋を施した「架橋発砲ポリエチレン(IR-PEF) 」もあります。
・エチレン・四フッ化エチレン共重合物(ETFE)
電気的特性のバランスが取れた材料です。
強度があり薄く加工できるために、細かい動きや繰り返し運動をするロボットケーブルの絶縁材料として適しています。
・その他
ロボットケーブルの絶縁体に使われている材料は他にも天然ゴムやシリコーンゴムなどがあります。
このように絶縁体の材料はそれぞれ異なる特性を持ち、絶縁体によって使用温度の上限値も違います。
ケーブルの故障や万が一の事故を起こさないためには、ケーブルに使われている材料の特性を考慮し正しく配線しなければなりません。
そこで取り違えないよう確実に線心を識別する方法が必要になるのです。
絶縁体が色分けされている理由
絶縁体で覆われた1本1本の導体を線心と呼びます。線心が2本以上のケーブルの場合、それぞれの線心を識別できるように、導体を覆う絶縁体を色分けしています。
例えば、2本のケーブルがどちらも同じ色の場合、見た目には区別がつきません。絶縁体が色分けされることにより、誤配線防止や配線効率向上を図ることができます。
一例として、線心が2本(2心)~7本(7心)のときの色分けを以下に示します。
2心:黒・白
3心:黒・白・赤
4心:黒・白・赤・緑
5心:黒・白・赤・緑・黄
6心:黒・白・赤・緑・黄・茶
7心:黒・白・赤・緑・黄・茶・青
線心の数が増えれば識別に用いられる色(識別色)も増える傾向にありますが、それぞれの線心を区別できれば良いため、必ずしも「線心の数=識別色の数」とは限りません。ケーブルを利用する際は、製品仕様を参照し、色分けのルールを確認しておきましょう。
色分け以外の線心の識別方法
線心の識別方法は「色分け」だけではありません。他にも外見から識別する方法が存在します。
形状による識別
絶縁体に小さな突起を入れて識別しているケーブルがあります。例えば、ケーブル内の線心が2つの場合、突起がある線心とそうでない線心とで区別が可能です。
ナンバリングによる識別
絶縁体に数字を印刷して識別する方法です。それぞれの線心に番号が振られ、見分けられるようになっています。
スパイラル(スパイラルマーク、スパイラルマーキング)
表面にらせん状(スパイラル)のラインが入るよう加工する方法です。
埋め込みライン(埋め込みラインマーク)
絶縁体とは別の色のビニルを用い、ラインを入れます。
インクでラインを入れるよりも色が明確でラインが消えることも少なく、識別しやすい方法です。
ドットマーク
表面に印字された点(ドット)の数や色で識別する方法です。
おわりに
今回は、ケーブルに絶縁体が用いられる目的と、絶縁体の色分けの理由についてご紹介しました。
導体同士が直接接触しないように絶縁体で被覆し、それを集めてシールドおよびシースで被覆したものがケーブルです。ケーブルの絶縁体の色分けは、線心を正しく識別して、誤配線を防止する目的で行われています。”