電線の絶縁体とシース(外皮)について
電線の内部には電気を伝える導体があり、絶縁体とシース(外皮)で覆われています。絶縁体とシースは、導体の保護や事故の防止に不可欠な存在です。
今回は、絶縁体やシースの特徴と役割についてご紹介します。
電線とは?
そもそも電線とは、どのようなものを指すのかご存じでしょうか。
電線とは、電力や電気信号を伝える金属線のことです。
電線の種類には、電気が流れる導体を絶縁体で被覆した「絶縁電線」や、絶縁電線もしくは絶縁電線をより合わせたものにシース(外皮)を施した「ケーブル」があります。
私たちが日常生活で使用する電線の多くはケーブルです。例えば、スマートフォン充電器、LANケーブル、家電製品のコードはケーブルに該当します。
絶縁体は電気抵抗に優れる
物質の中には電気を通すものや電気を通さないもの、両者の中間的な性質を持つ半導体と呼ばれるものがあります。絶縁体とは、電気を通さない物質のことで、不導体や不良導体とも呼ばれます。
絶縁体は電気抵抗が大きいため、電気の流れを遮断する目的で使用することが可能です。例えば、銅やアルミニウムなどの導体を絶縁体で被覆することで、電気が電線の外に漏れることを防ぐことができます。これが絶縁電線です。電線に用いられる、絶縁体の主な素材としては、ポリ塩化ビニルやフッ素樹脂、架橋ポリエチレン、天然ゴム・合成ゴムなどが挙げられます。
なお、被覆を持たず導体がむき出しになった電線を裸電線と呼びます。裸電線の場合、空気による空間が絶縁体として機能します。
シース(被覆)により絶縁体を保護
シース(被覆)とは、ケーブル外側の被覆のことで、絶縁体が濡れたり、傷んだりすることを防ぎます。シースのおかげで、私たちは安全にケーブルを使用することができるのです。
シースとして使用される材質はケーブルの用途に合わせて選択され、主にクロロプレンゴムやポリ塩化ビニル、ポリエチレン、鉛、アルミニウムなどが使用されます。
絶縁体の識別方法
絶縁体の材料は電線・ケーブルによって異なります。
多くの電線・ケーブルを配線する際に絶縁体の識別ができないと、誤配線が起こる可能性があります。
そのため、ケーブルは下記のように絶縁体を視覚的に識別する方法がとられています。
・色分け(カラー識別):線心ごとに色を分ける方法
・ナンバリング:表面に番号を振る方法
・スパイラル(スパイラルマーク、スパイラルマーキング):表面にらせん状のラインが入るよう加工する方法
・埋め込みライン(埋め込みラインマーク):ラインの色を明確にするため、絶縁体とは別の色のビニルを用い、ラインを入れる方法。
・ドットマーク:表面に長さや色、数の違う点を入れる方法
ほか
絶縁物の使用温度の上限値は「電気用品安全法」で定められている
日本の電気用品に対して適用される規格の1つに、「電気用品安全法」があります。
これは電気用品の製造、輸入、販売等の規制や電気用品の安全性の確保などを目的として定められたものです。
同法内には電線・ケーブルについても記載があり、「絶縁物(絶縁体)の使用温度の上限値」について定められています。
この法でいう「使用温度の上限値」とは、“絶縁物が常規使用状態にあり、最高温度が加えられて連続使用された場合”に許容される温度の上限値を指します。
詳しく状況や数値をみてみましょう。
・常規使用状態・・・「電気用品安全法」の解釈である「電気用品の技術上の基準を定める省令」に定められた、基準周囲温度で行う平常温度上昇試験の状態
・絶縁物に加わる最高温度・・・常規使用状態で機器の温度上昇が飽和した際に絶縁体に加わる最高温度
・連続使用・・・原則40,000時間
具体的な温度について、詳しくは「電気用品安全法 別表第十一 電気用品に使用される絶縁物の使用温度の上限値」をご参照ください。
海外の規格にも絶縁体についての要求事項がある
製品を海外に輸出する際には、製品がそれぞれの国や地域が定める規格に従ったものでなければなりません。
電気用品に関する海外の主な規格は下記の通りです。
・UL……アメリカの保険業者安全試験所(Underwriters Laboratories Inc.: UL)が策定する製品安全規格
・CSA……カナダにおける電気製品・医療機器・機械・器具などに対する安全規格
・CEマーキング……欧州連合(EU)内で製品を流通させる際に必要な規則や指令を満たしたことを示すマーク
・CCC……中国国内の消費者保護や安全確保を目的とした認証。通称「中国強制認証」
たとえばUL規格では、絶縁材料をはじめとした、絶縁システム全般に関する要求事項があります。
製品を海外に輸出する場合は、輸出先の規格も頭に入れておきましょう。
おわりに
今回は、電線に用いられる絶縁体やシースについてご紹介しました。
用途や環境に応じて、電線の絶縁体やシースは異なります。電線を選ぶ際には、電線にどのような性能を求めるのか(耐水性、耐熱性、柔軟性など)を明らかにした上で、製品に使用される絶縁体やシースの種類を確認することをおすすめします。”